2009年7月8日水曜日

タワーマンション住民は震災に備えて何を準備すればよいのか(後編)

前編から続く)

トイレ問題は深刻、簡易トイレの備えが必要

震災時のタワーマンションでの自活を想定したとき、見落としがちな問題にトイレ問題があります。この問題は非常に深刻です。タワーマンション住民の多くが「トイレ難民」と化して避難所生活に追い込まれるのではないかと予想されるほどです。

東京都防災会議の推計にもあるように、大地震が起きれば港区では3割以上の確率で上水道が断水し、復旧にも長い時間がかかります。断水するということは水洗トイレも使用不能になるということです。自宅のトイレから便を流すことができなければ、悪臭を発するだけでなくハエや病原菌もわいてきます。衛生的にとても居られない環境になってしまいます。

行政では災害時の仮設トイレとして下水道のマンホールに直接接続するマンホールトイレを用意していますが、これは地上にしか設置できません。断水していてもエレベーターが使えるなら、便意をもよおすたびに自宅から地上まで降りていくこともできなくはないですが、エレベーターが止まってしまった場合は、便意をもよおすたびに階段を上り下りするのはとても無理でしょう。

何とかして自宅の水洗トイレを使う方法を考えてみましょうか。小便は「流さない」「何回分かまとめて流す」という選択もありえますが、大便の場合はそうもいきません。大便を流すには1回10リットル程度の水が必要です。浴槽に150リットルの残り湯を貯えておくことができたとしても、4人家族なら4日で使い果たします。しかも、後述するように残り湯を貯えることは簡単ではないと考えられます。給水車による給水も飲用水と最低限の生活用水で手いっぱいで、トイレ用水までは給水してくれません。あとは思い切って川や海の水を使うかですが、タワーマンションの上層階までトイレ用水を担ぎ上げるのは極めて困難でしょう。

トイレ問題を解決するには、紙おむつと同じ原理で水なしでも使用できる簡易トイレを各家庭で備蓄しておくしかないと思います。簡易トイレには洋式便座の内側に取り付けて使うタイプがありますので、自宅で使うとすればこれが使いやすいと思います。この簡易トイレを少なくとも3日分、可能であれば1週間分備蓄しておくことが推奨されます。1日あたり大1回として4人家族の3日分なら12回分、1週間分なら28回分となりますが、多少の予備は別に必要でしょう。

1週間後には備蓄分を使い果たしてしまいますが、その頃までには大部分のエレベーターが復旧していると考えられます。あとは上下水道が復旧するまでの間、便意をもよおすたびに地上まで降りていく生活が続くことになります。

生活用水はなくても生活できる用意を

飲用水の他に、体を洗ったり歯を磨いたりするための生活用水も必要になります。最悪、風呂に1週間くらい入らなくても死ぬことはありませんが、なかなかそういうわけにもいかないと思います。

地震に遭ったときに浴槽内に残り湯が残っていて、それを使うことができれば、普通の家庭で100リットルから150リットルくらいになります。このほか、水洗トイレのタンク内の水を使えれば20リットル近くを確保できます。また、マンションの共用受水槽内に水が残っていて、それが各家庭に配布されれば、状況にもよりますが1世帯あたり100リットルくらいにはなるかもしれません。

震災時に残り湯を使えるようにするためには、日頃から、風呂の残り湯はできるだけ長く貯めておくようにする、残り湯で洗濯するなら午後の遅い時間にする、などの行動を心掛ける必要があります。ただし阪神大震災の経験では、揺れで栓が抜けたりして残り湯が流れてしまうことも多く、簡単にはいかないようです。従って生活用水に関しては、残り湯を確保できれば幸運と考えて、水なしでも生活していけるよう用意しておくことが望ましいと考えられます。

入浴に関しては、登山などでよくやる方法なのですが、ボディペーパーとかボディタオルという名前で売られている紙タオルで汚れた体をよく拭けば、風呂に入ったのと同じくらいすっきりします。私の経験ではギャツビーのボディペーパーなら2枚もあれば体中きれいにできますが、きれい好きの人なら1日あたり10枚くらい使うかもしれません。30枚入の徳用パックで4人家族の1日分、3日分なら3パックということになるでしょうか。女性向けのKOSEのボディタオルもあります。

他には、洗髪に関しては水なしで洗髪するためのドライシャンプー、歯磨きに関しては水なしで磨くためのペーパー歯磨きといったものがあります。このあたりも準備しておいた方が良いでしょう。

懐中電灯は乾電池の使用期限が弱点

地震の影響で夜間に停電した場合に備えて懐中電灯が必要になります。近年一般的になったLED懐中電灯は電球式と比べて圧倒的に寿命が長く、明るく、電池の持ちが良いので、まだお持ちでない場合は早速買い換えましょう。

ただし弱点は乾電池の使用期限です。乾電池は古くなると液漏れなどを起こして使えなくなります。使用期限は通常のマンガン乾電池で3年以下、アルカリ乾電池やリチウム乾電池でも5年程度しかありません。いざというときに乾電池が古くなっていて使えなかったとなる可能性があります。

備蓄用乾電池として推奨されるのはパナソニックのEVOLTAです。使用期限が最も長く、10年間備蓄しておくことができます。またロウソクは火災の原因となるので推奨はできませんが、まさかの電池切れの場合の予備として考えておくのも良いでしょう。

その他の生活必需品

阪神大震災の際は、赤ちゃん用の紙おむつやミルク、女性用の生理用品などが手に入りづらかったようです。災害時にこれらの生活必需品が不足する事態を避けるためには、日頃から「なくなったら買いに行く」のではなく、「最初に2箱購入し、1箱使い切ったら、もう1箱を開ける前に新たに1箱買い足す」という行動を習慣づけると良いでしょう。

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