2009年7月2日木曜日

タワーマンション住民は震災に備えて何を準備すればよいのか(前編)

先日の記事を書いた際に「港区高層住宅の震災対策に関する基本方針」を見直してみました。指針は港区内の各家庭に対して、大きな地震に備えて、飲料水、食料品、簡易トイレその他生活必需品を7日分、自主的に備蓄することを求めています。しかし、「7日分」とはどのくらいの量なのか、「その他生活必需品」とは何を指すのか、具体的な内容は示されていません。

他には消防庁のサイトを見ると、非常持ち出し袋の中身はこんなものが必要ですと書かれています。しかし、これはあくまで郊外の家に住んでいる人が近所の学校などの避難所に避難するような状況を想定したものです。後述するように、地震に遭ったからといって避難所へ避難する必要は(適切に準備さえしていれば)まずないであろうタワーマンション住民にとって、この情報は参考になりません。

政府・自治体がこの通り頼りにならないので、仕方ないのでタワーマンション住民が震災に備えて何をどのくらい準備すればいいのかを自分で考えることにしました。

避難所へ避難する必要はまずない

1981年以降の新耐震基準に適合しているマンションは大地震が来てもそう簡単に倒壊することはありません。地震で柱が破損し倒壊するおそれが生じた場合などは別ですが、そうでないなら避難所へ避難する必要はありません。

また都心部では、避難所が帰宅困難者であふれかえり、避難しようにもできないという状況も想定されます。基本的にタワーマンション住民は震災時は自宅で待機するものと考えた方が良さそうです。

ただし、以下で述べるような震災への備えを怠っていた場合は、自宅では生活してゆけなくなり、避難所へ避難せざるを得ない状況となる可能性があります。

エレベーターの停止が課題

タワーマンションには大きな弱点があります。停電や装置の破損によってエレベーターが使用不能になれば、住民は階段を使って上下移動せざるをえません。上層階になればなるほど地上との行き来は困難になり、特に足腰の弱い高齢者などは孤立してしまうおそれがあります。

どの程度の数の住民がこのような事態に陥るかですが、東京都防災会議が公表した「首都直下地震による東京の被害想定報告書」によれば、最も被害が大きくなる東京湾北部直下型地震(M7.3)を想定したとき、港区におけるライフラインの被害状況は次の通りとなります。

電力施設の停電率 8.6%
ガス施設の供給停止率 20.4%
上水道施設断水率 35.1%
下水道管きょ被害率 23.1%

このように自宅が停電する確率は10パーセント以下です。運悪く停電したとしても、推計によれば電力供給は6日以内に全面的に復旧します。エレベーター装置の破損の可能性についても、1棟に複数台あるエレベーターの全部が使用不能になる事態は考えづらいです。なのでエレベーターの停止によって孤立状態となる住民は少数派とみられます。

とはいえ、地震発生後の一定期間は点検のためにエレベーターの利用が制限されるといった事態もありえますし、自分がそういう事態に巻き込まれる可能性を想定して備えを固めておくに越したことはないでしょう。「港区高層住宅の震災対策に関する基本方針」は1週間自活できる生活必需品を自主的に備蓄するよう求めていますが、阪神大震災の経験でも3日後には救援の手が行き届くようになります。まずは3日分を目標に物資を備蓄し、その後で量を充実させていくようにすれば良いかと思います。

飲用水は段ボール2箱が目安

タワーマンションでの自活を想定したとき、最優先すべきは飲み水の確保です。東京都防災会議の推計にあるように、上水道は港区では3割以上の確率で断水し、復旧にも最長で21日を要します。給水車による給水も地震発生直後には期待できませんし、運河にかかる橋が損傷を受けて給水車が通行できなくなるおそれもあります。生物学的にも飲み水は最重要です。人間は何も食べなくても2~3か月くらいは生きていられますが、飲み水が尽きれば1週間以内に死亡します。

飲用水の所要量は1人1日あたり2リットルが目安です。4人家族の3日分なら24リットルとなります。よく2リットル入りのミネラルウォーターのペットボトルが6本単位で箱売りされていますが、あれを2箱備蓄しておけば良いことになります。

ミネラルウォーターは最長2年間程度しか保存できないので定期的に入れ替える必要があります。うまいやり方としては、最初に3箱購入し、お父さんが水割りにして1箱飲んでしまったら次の箱を開ける前に新しい箱を購入して、常に2箱以上がストックされているように保てば良いでしょう。

なお5年間保存可能な長期保存水も売られていますが、値段も高いですし、上記の方法が取れるなら無理に買いそろえる必要はありません。

非常食は切実ではない

飲用水の確保という最優先課題に比べれば、食糧の確保はそれほど切実ではありません。各家庭の冷蔵庫の中身や食パン、缶詰、お菓子、おつまみなどを食いつなげば2~3日は持つでしょう。そうこうしている間に電力が復旧すればお米も炊けるようになりますし、やがて救援物資も届けられます。最悪、食べ物がなくなったとしても、1週間くらい何も食べなくても死ぬことはありません。

どうしても不安なら、インスタントラーメンやお菓子などを普段から多めに買いだめしておけば良いのではないでしょうか。乾パンのような専用の非常食を備蓄するのも悪くはありませんが、無理に買いそろえる必要もないと思います。

後編に続く)

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