先日、カルガモのファミリー同士のナワバリ争いの模様を掲載しましたが、こうしたカルガモの行動に関する研究論文がありました。
Tetsuo Shimada, Kazuyuki Kuwabara, Saori Yamakoshi, Tomomi Shichi, "A case of infanticide in the Spot-billed Duck in circumstances of high breeding density," Journal of Ethology, 20(2), pp.87-88, 2002 (嶋田哲郎・桑原和之・山越沙織・志知友美「高密度繁殖条件下におけるカルガモの子殺しの例」)
この論文によれば、狭い水面に多数のカルガモのファミリーがひしめきあうような状況になると、親鳥の攻撃性が高まり、他のファミリーの雛鳥を殺害してしまうことも起きるそうです。
子殺しの瞬間をとらえた写真は、学術書を探せば掲載されているかもしれませんが、ネット上にはちょっと見当たりません。先日の記事の写真はそういう意味で貴重なものになったと思います。
昨日は、芝浦アイランドの人工浮き巣で19日に孵化した7兄弟(芝浦A)とみられる7羽が、両親と一緒に新港南橋付近まで来ていました。念のため同じ時間帯に芝浦アイランド周辺を探してみたところ、そちらでは雛鳥の姿が全く見当たらなかったので、間違いないと思います。
その後、案の定、芝浦Aの父親と高浜運河Aの母親とで激しい喧嘩になっていました。
ナワバリ争いが起きるほどたくさんのファミリーが新港南橋付近に集まってくるのも謎です。私の推測では、新港南橋付近の水域は、海への出入り口から最も遠いうえに、芝浦水再生センターからの排水口もあるため、近隣の運河の中では塩分濃度が最も低いと考えられます。カルガモは本来は淡水の沼地などに生息する野鳥ですから、海の水は苦手で、真水に近い水のところに集まってくるのではないかと思います。
昨日はさらに驚いたことがありました。5月22日から23日頃に孵化したファミリー(高浜運河C)は、11羽に減ったはずでした。
この謎を説明すると考えられるのが、昨日新たに確認したファミリー(高浜運河D)の存在です。5月23日から24日頃に孵化したと考えられるのですが、雛鳥は3羽しか見当たりませんでした。
カルガモなどのカモ類では、「雛混ぜ」といって、ファミリー同士が近づきすぎてしまうと、雛鳥が間違えて他の親鳥についていってしまい、親鳥も見分けがつかずにそのまま育てるということがあるそうです。
高浜運河Dは、はじめは6羽であったものが、何らかの理由で雛混ぜが起こり、3羽は高浜運河Cについていってしまったのではないかと想像されます。
そして今朝、新港南橋の近くで14羽が健在なのを確認すると、何とその近くに新たなファミリーとみられる6羽の雛鳥と親鳥(高浜運河E)がいました。しかしそのうち2羽が、親鳥から離れているうちに、高浜運河Aの親子に苛められ、追い立てられていました(会社に遅刻しそうだったので写真を撮る暇がなかったのが残念!)。
2羽の安否が気にかかったので、残業もせずに帰ってくると、高浜運河Eとみられる4羽の雛鳥と親鳥がいました。2羽はナワバリ争いの中で死んでしまったのか・・・
あれ?今朝は14羽だったはずの高浜運河Cが、今度は16羽に増えています。
高浜運河Eのうちの2羽は、高浜運河Aの親子に追い立てられ、必死に逃げ回るうちに、高浜運河Cに混ざってしまったと考えられるのではないでしょうか。
ファミリー名 | 推定孵化日 | 最初に確認した雛 | 現時点での生存数 | 備考 |
---|---|---|---|---|
高浜運河A | 5/3~4 | 7羽 | 6羽 | 雄が随伴 |
高浜運河B | 5/18~19 | 5羽 | 5羽 | |
芝浦A | 5/18~19 | 7羽 | 7羽 | 雄が随伴 |
高浜運河C | 5/22~23 | 12羽 | 16羽 | |
高浜運河D | 5/23~24 | 3(6?)羽 | 3羽 | Cに移った? |
高浜運河E | 5/24~25 | 4(6?)羽 | 4羽 | Cに移った? |
現在までに、芝浦・港南エリアでは上記の6ファミリーのカルガモ親子が確認されています。現時点での雛鳥の生存数は41羽と推定されます。
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